統合失調症不完全寛解患者に対するアリピプラゾールへの変薬の効果に関する研究

 現在、統合失調症医療は管理を中心とした、つまり問題行動が無くなればそれでよいとする治療から、ノーマライゼーション、つまりできるだけ患者さまに「普通の」生活を送ってもらおうとする治療に転換しつつあります。そのため、鎮静作用が少なくても症状はきっちりコントロールでき、且つ副作用が少ない薬剤の使用が望まれます。
 アリピプラゾール(商品名 エビリファイ)は、鎮静が少なく且つ従来の薬剤と同等の向精神病作用を持ち、副作用も少なく、患者満足度が最も高い薬物の一つであることが、既に海外の研究で明らかになっています。しかしながら、現在使っている抗精神病薬からアリピプラゾールへスイッチングを行った際に患者さまに何が起こるのか詳細に検討した研究はなく、アリピプラゾールの実際の有効性ほどに使用が広まっていないのが現状です。
 本研究では、アリピプラゾールへのスイッチングを行い、その後の精神症状、生活活動、副作用などを評価して、アリピプラゾールの有用性の検討することを目的とします。

自閉症スペクトラム指数に対するうつ病の影響に関する研究

 自閉症傾向を持つ者がうつ病にかかった場合、うつ病の治療単独では一旦治癒しても再発するリスクが高い事がわかっています。一方で自閉症傾向に対して適切な対応がなされれば、再発のリスクは軽減できることもわかっています。従ってうつ病の患者さまの自閉症傾向は的確に把握される必要があります。自閉症傾向を持つ者は100人に2人程度いる事がわかっていて、決してまれではありません。
 自閉症スペクトラム指数(以下AQ)は患者の自閉症傾向の程度を表すと言われているもので、簡便に施行することができます。しかし、現時点でうつ病がAQにどのような影響を及ぼすのかは明らかになっていません。うつ病がAQに影響を与えないことを明らかにできれば、うつ病の患者さまにAQを施行することによって簡便に自閉症傾向を知ることができ、再発予防に関わる大切な情報をえることができます。
 うつ病がAQにどのような影響を与えるのかを明らかにすることが本研究の目的です。

思春期青年期のうつ病に対するデュロキセチンの効果に関する検討

 海外で使用されるフルオキセチンと言う薬物に関しては、思春期青年期のうつ病に対して有効であるという研究があります。しかし、日本で保険適応のある抗うつ薬の全てが、思春期青年期のうつ病に対して有効であると言うはっきりとした実証的データを有していません。また多くの薬剤が思春期青年期のうつ病に対する効果の検討が十分になされていないのが現状です。  本研究は抗うつ薬の一つであるデュロキセチンと言う薬物について、思春期青年期のうつ病に対する有効性を検討するものであり、デュロキセチンの効果を実証できれば、思春期青年期のうつ病に対して治療の選択肢を広げることができると考えています。

パニック障害治療における認知行動療法とアクセプタンス&コミットメントセラピーの効果の比較について

 認知行動療法(CBT)とは精神療法(心理療法)の中の一つの方法で、パニック障害の治療法として科学的に効果が実証されている治療法です。また、アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)は認知行動療法のより新しい技法として近年注目されている方法で、これまでの認知行動療法よりもより効果があるという報告があります。  CBTならびにACTのパニック障害治療に対しての効果の検証は海外においては報告がありますが、日本では実施している医療機関はまだまだ少なく、ACTに至ってはほとんど行われていないのが現状であり、日本人患者さんでの効果については検討がなされていません。そこで、今回滋賀医科大学精神科ではパニック障害患者を対象にCBTとACTの治療効果についての研究を行っています。

交通事故体験者の精神医学的健康の問題に関わる実態調査

 交通事故などの大きな精神的ストレスに見舞われた方が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病などメンタルヘルス上の問題を発生しやすいことは既に皆さんご存じだと思います。しかし、交通事故後にどれだけの方がこれらのメンタルヘルス上の問題を発生するのかについては、未だまとまった結論が出ていません。地域差も多く、様々な要因がその発症に関与していることが推測されます。滋賀県における交通事故後のメンタルヘルスの向上に貢献するため、滋賀県警察本部と滋賀医科大学地域精神医療学講座で協力し、滋賀県内で交通事故に遭われた方を対象に、メンタルヘルス上の問題の発生頻度、その背景などを調査しております。